研究概要 |
研究代表者の伊藤は車軸藻ミオシンのループ2およびループ3に変異を与えた種々の変異車軸藻ミオシンを作製し,それらのアクチン活性化ATP加水分解活性およびアクチン滑り運動活性を調べた。その結果,ループ3の正電荷はアクチン活性化ATP加水分解活性のVmaxを大きくするのに必要であることがわかった。また親和性を大きくするのにも必要であることがわかった。一方,ループ2の正電荷を大きくするとアクチンとの親和性を増大させることができたが,一方,アクチン滑り運動速度が減少した。これはループ2の正電荷の増大にともないアクトミオシンからのADPの解離が遅くなることがわかった。つまり,車軸藻ミオシンはループ2の電荷がほとんどなく,ループ3の電荷が大きいが,これはループ2の電荷を上げることなく,ループ3の電荷を上げることによりアクチンとの親和性を維持したまま,高速運動を可能にするためということが分かった。 分担者である安永は、車軸藻ミオシンの構造について、アクチンとの結合状態、及び、単独のものについて、ATPの有無に応じて、電子顕微鏡を用いた構造解析を行い、それぞれの三次元構造を2-3ナノメータの分解能で得ることに成功した。その結果、ミオシン単独のものに比べ、アクチンと結合した際に、ATP結合クレフトが大きく開いた構造をとっていた。このことは、車軸藻ミオシンのもつ、高速のADP解離、ATP結合等の生化学的データの構造学的裏付けを示唆している。
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