研究概要 |
(1)X線結晶構造解析:野生型ニューロセルピンとポリマー化抑止剤の1つであるグリセロールが結合した結晶のX線構造解析に成功し(プロテイン・データバンクにコード番号3FGQで登録)、ポリマー化抑制に関与するアミノ酸残基の特定に成功した(雑誌論文3,学会発表3-5:いずれも責任著者)。この成果は、ニューロセルピンのポリマー化抑止剤をデザインする上で極めて有用である。 (2)Refolding経路の解析:セルピンのポリマー化反応と密接に関わるFolding経路を、蛍光測定や高速液体クロマトグラフィなどの手法を使って解析した。その結果、ポリマー化反応の根本原因である準安定天然型分子種は、セルピンのFolding経路上の必須の中間体であるという極めてユニークなFolding機構を明らかにした(雑誌論文1,学会発表2:いずれも責任著者)。この成果は、セルピン病を含めた、すべてのコンフォメーション病の発症機構を解明する上で極めて重要な知見である。 (3)ポリマー化抑制物質の探索:ポリマー化抑止効果のより高い物質をNative-PAGEで探索した。その結果、正電荷を有するアミノ酸誘導体が有効であることが分かった。(1)のX線結晶構造解析の結果から、ニューロセルピンは広範囲の負電荷クラスターを表面に露出していることが明らかとなっており、この部分との相互作用がポリマー化抑止に関与していると考えられる(学会発表1,4:いずれも責任著者)。また、ポリマー化抑止剤を高効率に標的細胞へ輸送するシステムについて、有望な系を見出すことに成功した(雑誌論文2:責任著者)。この成果は、ポリマー化抑止剤を実際に人体へ投与するシステムを構築する上で、非常に有用である。
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