申請者らが開発した蛍光1分子顕微鏡システムは、蛍光励起用のレーザー光の入射位置をPC制御でシフトすることにより、照明方法を落射照明法(Epi)から全反射照明法(TIRF)そして薄層斜光照明法(HILO)へと変化させることができる。観察対象により、より背景光が低い照明法を選択できる利点がある。薄層斜光照明法は、細胞の厚みよりも薄い6〜10ミクロンの幅で、細胞内部だけを薄層状に照明することにより、背景光を抑えると同時に、シグナル画像強度を増加させることで、シグナル/ノイズ比の高いクリアな1分子蛍光画像を得られる特徴がある。顕微鏡のステージPC制御によるフォーカスコントロールと合わせてPC制御することにより、制帽表面と細胞内部の任意の深さを瞬時に切り換えることができ、それぞれの場所での最適な観察と同時に3次元イメージングが可能になる。 この顕微鏡システムを用いて、薄層斜光照明法により細胞核内での転写因子の1分子イメージングを行った。転写因子のGFP融合タンパク質を低レベルで定常的に発現する細胞種を構築し、観察したところ、生きた細胞核内での転写因子1分子を鮮明に可視化することができた。これにより転写因子の動態を解析することが可能になった。1分子イメージングの結果を用いて、滞在時間、拡散係数などの定量解析を行ったところ、秒単位の滞在時間の分布が得られ、DNAとの相互作用を示唆すると考えている。 また、全反射照明法を用いて、免疫細胞活性化初期過程で重要とされる補助因子シグナル伝達の時空間的制御の動態についても、明らかにすることができた。
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