研究課題
近年、ユークロマチン上において転写が活性化される際にはその標的遺伝子プロモーターを取り巻くピストンに対し様々な修飾が極めて重要であることがわかってきた。アセチル基修飾(アセチル化)を担うCBP/p300は、種を越えて構造と機能が保存された代表的なヒストンアセチル基転移酵素で、多くの遺伝子の転写活性化には欠かせないことが知られている。一方で、CBP/p300は転写不活性化にも拘わることが報告されつつあり、その分子機構は不明であった。我々はショウジョウバエ複眼の赤色色素を指標にしたクロマチン構造変化の解析系からショウジョウバエGBPがヘテロクロマチン形成能を示すことに着目し、GBPが唾液腺染色体のユークロマチンのみならず、ヘテロクロマチン上にも局在すること、更にヘテロクロマチン上では転写抑制を促すことを見出した。そのヘテロクロマチン上のCBP/p300はピストンを脱アセチル化する酵素Sir2にアセチル化修飾し、アセチル化されたSir2はピストンに対し脱アセチル化活性を強めることが判明した。すなわち、転写活性化にこれまで広く知られていたヒストンアセチル化酵素が、ヘテロクロマチン上では標的を変え、ヘテロクロマチン化に寄与することが明らかとなった。この成果は、一つの転写共役因子がヘテロクロマチン上でも積極的にヘテロクロマチン化を促すことを意味しており、リクルートされる場所により標的遺伝子の発現調節していると考えられる。すなわち、時期や組織特異的な遺伝子発現の選択性を示す一つの作用機序を示唆するものである。
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Proc Natl Acad SCi USA 106
ページ: 3818-3822
Mol Cell Biol 29
ページ: 1017-1034