研究課題
転写因子 E2F は癌抑制遺伝子産物 pRB の標的で、増殖刺激による増殖関連遺伝子の発現を仲介する。一方 pRB の機能が欠損すると、E2F は癌抑制遺伝子産物 p53 を活性化する ARF 遺伝子の発現を誘導し癌化を抑制する。E2F が増殖刺激による生理的な pRB の不活性化と癌化に伴う pRB の機能不全を識別する機構を検索した。我々は、ARF 遺伝子が増殖刺激で誘導された生理的な E2F 活性は感知せず、pRB の強制的な不活性化で生じた制御を外れた E2F 活性を特異的に感知することを報告している。今回、RB 経路の上流に位置するサイクリン依存性キナーゼ抑制因子 p27 遺伝子も ARF 遺伝子と同様の制御を受けることを見出した。従って、pRB の制御を外れた E2F は、p53 経路だけでなく RB 経路も活性化することが明らかとなった。また、癌抑制遺伝子 TP73 も制御を外れた E2F 活性を優先的に感知することを見出した。p27 遺伝子と p73 遺伝子の E2F 反応性エレメントは、ARF 遺伝子のそれと異なり典型的な E2F 結合配列に類似していた。従って、制御を外れた E2F 活性を特異的に感知するには、E2F 結合配列の特異性のみでは不十分であり、プロモーター全体の構造が重要であることが示唆された。生理的な E2F と制御を外れた E2F の違いを検索するために、E2F 活性に必須と考えられている結合パートナーである DP 分子の必要性を検討した。shRNA を用いた DP のノックダウン実験から、制御を外れた E2F による ARF 遺伝子発現とアポトーシスの誘導には DP を必要としないことが強く示唆された。従って、生理的な E2F と制御を外れた E2F には質的な差があることが予想された。E2F の修飾の差を検討したが、調べた範囲ではリン酸化・ユビキチン化・ SUMO 化に明らかな差は見出されなかった。現在、生理的な E2F と制御を外れた E2F の修飾の差を更に検討している。
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