研究概要 |
ゲノムDNAは、細胞内ではヒストンなどの蛋白質と共に様々な高次クロマチン構造を形成することによって、染色体機能が維持され、クロマチン構造を必要に応じて変化させることで様々なDNA代謝反応(転写、複製、修復、組換え)に寄与している。クロマチ構造の核となるヒストンの生合成はDNA複製と連動して厳密に調節されており、新規合成ヒストンの複製フォーク上への供給抑制や過剰なヒストンの蓄積は細胞に重篤な影響を及ぼす。すべての真核生物において、新規合成ヒストンH4のN末端5番と12番目のLysは高度にアセチル化されていることから、本アセチル化の新規ヌクレオソーム形成やヒストン代謝に及ぼす影響が示唆されているがその詳細は明らかでない。以前、我々はhistone acetyltransferase-1(Hat1)が新規ヒストンH4アセチル化の責任酵素であることをHAT1欠損ニワトリDT40細胞を作製して明らかにした。本欠損変異株は生育速度に若干の減少が認められるが、DNA複製能及び複製鎖上のヌクレオソーム形成反応には顕著な影響はない。一方でCPT,MMSなどの複製阻害剤に対する感受性が増加することから、Hat1を介するヒストン代謝機構の複製停止における損傷修復・応答への関与を示唆している。今年度、我々はタグ付きHat1発現細胞の細胞質画分からHat1と共免疫沈降する因子を調べところ、Hat1のsubunitであるRbAp48以外に、ヒストンH3/H4、さらにH3/H4シャペロンとして知られるAsf1が共沈することがわかった。DT40とHAT1欠損細胞の細胞質画分をショ糖密度勾配遠心法で分画して、谷因子の分布を調べたところ、HAT1欠損細胞ではH3-H4を含む画分(〜140kD)が低分子側にシフトし(〜70kD)、同様の変化がAsf1にも認められた。タグ付きのAsf1複合体をDT40とHAT1欠損細胞から部分精製し、ショ糖密度勾配遠心分画したところ同様の結果が得られた。以上の結果は、Hat1もしくはH4のLys-5,12のアセチル化が安定したH3-H4複合体形成に寄与し、H3-H4複合体の一部はHat1とAsf1が担っていることを示唆している。
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