JIPは代表的なモータータンパク質であるキネシンと種々のカーゴを結ぶアダプタータンパク質であると共に、細胞の分化、増殖、アポトーシス、免疫応答等に関わることで知られるc-Jun N-terminal kinase(JNK)とこれの活性化酵素群(DLK、MKK7)と結合する。このことは、JNKの多様な生理機能の少なくとも一部がJIPを介した細胞内輸送に依存している可能性を示唆している。しかし、どのような形態のJNKがJIPに結合するのかについては不明であった。すなわち、JNKはシグナル伝達の上流に位置するタンパク質リン酸化酵素によりリン酸化され、活性型となることが知られているが、リン酸化されたJNKとリン酸化されていないJNKとの間でJIPとの結合能に差があるのか否かについて明確な知見はなかった。これはJIPを介したシグナル伝達のメカニズムを探る上で根本となる課題であり、我々はまずこの点を明らかにする目的で免疫沈降法を用いた実験を行い、以下の結果を得た。1)リン酸化されたJNKとリン酸化されていないJNKを比較すると、リン酸化されたJNKの方がJIP1とより強く結合する、2)このリン酸化されたJNKのJIP1内での結合は既に報告のあったJNK binding domain(JBD)に依存する。3)リン酸化されたJNKとJIP-1の結合能力はJIP1のC末端deletionによって増強する。これらの結果から、リン酸化されたJNKがJIP1のJBDに選択的に結合し、JIP1のC末端部分が関与する何らかのメカニズムにより、リン酸化されたJNKのJIP1への結合が制御されるというモデルが考えられる。現在このモデルの検証を行うと伴に、細胞内輸送との関わりについて検討を進めている。
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