研究概要 |
遺伝子相同組換えの要である相同対合は,二本鎖DNAの切断により生じた一本鎖DNAと,相同な二本鎖DNAの間で対合体(D-100p)を形成する過程である。出芽酵母のRad51は相同対合の中心的な役割を果たす蛋白であり, Rad52と複合体を形成してD-loop形成を触媒する。Rad51はRad55とも複合体を形成し, Rad55はRad57と複合体を形成する。本研究ではこれらの蛋白の生化学的な解析を行った。まずRad55とRad57の大腸菌での発現では,trxβ/gor欠損変異株でチオレドキシンを共発現し低温培養することで可溶化が可能となった。また, Rad55とRad57を同じ菌体内で同時に発現すると発現量が共に減少した。必要量の複合体の確保のために両蛋白を別々の菌体で発現精製した後に複合体を形成させる計画に切り替えた。Rad55を発現した大腸菌(68g)から各種カラムクロマトによりSDS-PAGEでほぼ単一のバンドにまで精製した。精製したRad55は一本鎖DNAへ結合したが,二本鎖DNA結合は見られなかった。Rad55とRad51の両者の存在下では一本鎖と二本鎖DNAの両方に結合し,一本鎖DNAへの優先的結合は見られなかった。D-loop形成において, Rad51単独ではD-loop形成は見られないが,Rad55の添加によりD-loop形成が見られた。しかしRad51-Rad52複合体の1/10程度であった。一方, Rad51-Rad52複合体によるD-loop形成において,二本鎖DNA結合欠損変異Rad52の解析からRad52は二本鎖DNAへの結合に関与していることが示された。これに対し, Rad55によるD-loop形成促進はRad55が二本鎖DNA結合性がないことからRad52の促進効果とは異なる機構であると推測される。今後Rad57の添加により新たな効果が期待される。
|