研究概要 |
遺伝子発現におけるクロマチンの機能を解明するために,転写活性または抑制クロマチンドメインの分子構築と動態を明らかにすることを目的として,以下の項目について研究を行った。 1.出芽酵母ミニクロモソームの単離・精製法の確立とその構造-機能解析 酵母ゲノムにおいてピストンH4をコードする二つのHHF1またはHHF2遺伝子座にHis6タグ遺伝子を導入し,His_6-H4が発現することをwesternblottingにより示し,単離精製法について検討した。一方で,酵母細胞からミニクロモソーム分画を調製し,原子間力顕微鏡(AFM)による解析を試みた。現在,AFM試料調製の条件の検討を行っている。 2.酵母ゲノムにおけるクロマチンを介した転写制御機構 ゲノムPHO5遺伝子座のプロモーター領域にヌクレオソームの形成を阻害または促進する配列を導入し,転写制御におけるヌクレオソームの機能について解析した。その結果,ヌクレオソーム阻害配列を導入すると,転写抑制条件において,PHO5の発現が6-11倍に増加した。一方では,ヌクレオソーム促進配列を導入すると,転写活性化条件においてもPHO5の発現が著しく減少した。これらの結果から,PHO5の転写制御にヌクレオソームが本質的な役割を果たしていることがゲノムレベルで実証された。また,減数分裂初期遺伝子HOP1において,クロマチンを介した転写抑制の分子機構について解析を進めた。 3.出芽酵母ミニクロモソームにおけるアクチベーターの結合解析 ヌクレオソームへのアクチベーターの結合を解析するために,多サイクルプライマー伸長法と赤外蛍光DNAシーケンサーを用いて,新規のnon-RIフットプリント法を開発した。この方法を用いて,アクチベーターHaplは,ポジショニングしたヌクレオソームの中央部位のみならず周辺部位にも結合できないことが,in vivoで実証された。
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