上皮増殖因子(EGF)ファミリー分子はI型の膜蛋白質として細胞膜に発現する。そして刺激に応答し細胞外領域が切断され(ectodomain shedding)、増殖因子領域を細胞外へ遊離する。増殖因子の遊離後、細胞膜には膜貫通領域と細胞質内領域をもつカルボキシル末端ペプチド断片が残る。私達はヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)のカルボキシル末端ペプチド断片(HB-EGF carboxyl terminal fragment;HB-EGF-CTF)がある種の転写抑制性因子に結合する事、またCTF産生によりその転写抑制が解除されることを明らかにしてきた。本研究では、HB-EGF-CTFの局在制御を詳細に調べた。その結果、sheddingの誘導後、細胞質内領域を含むペプチド断片が、細胞膜から逆行性膜輸送経路を利用して核膜へ局在変化することを明らかにした。さらにジキトニン可溶化細胞を用いた蛍光抗体法および電子顕微鏡観察により核膜内膜にまで到達していることを示した。また、HB-EGFの細胞質内領域は、膜蛋白質を核膜局在化、ERへ移行能等の機能ドメインを含み、この逆行性輸送経路Rab11およびRab5が関与することを明らかにした。これらのことからsheddingの誘導後HB-EGF-CTFおよびsheddingを受けなかったproHB-EGFは細胞膜からエンドサイトーシスにより細胞内へ取り込まれ、その後エンドソームから、リサイクリングエンドソームを経由してERへ移行した後、核膜内膜に移行すると結論するに至った。
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