研究概要 |
上皮増殖因子(EGF)ファミリー総てのメンバーはI型の膜タンパク質として合成され、細胞膜に発現する。そして刺激に応答し、細胞外領域がプロセシングを受けEGF様増殖因子を細胞外へ遊離する(ectodomain shedding)。遊離されたEGF増殖因子はEGF受容体を活性化し細胞内ヘシグナルを伝達する。一方、細胞膜には膜貫通領域と細胞質内領域をもつカルボキシル末端ペプチド断片が残る。私達はヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)のカルボキシル末端領域がある種の転写抑制因子に結合しその転写抑制が解除することを明らかにしてきた。本年度、私達はEGFファミリー分子のHB-EGFとamphiregulinが膜貫通領域を保持したまま、細胞膜からER/核膜へと局在変化し、最終的には核膜内膜へ到達することを、つきとめた(Isokane et al.,2008, J.C.S.121,3608-3618, Hieda et al.,2008, J.C.B.180 763-769)。また、amphiregulinの核膜へ局在化にはそのカルボキシル末端およそ10アミノ酸の切断が必要であり、これによって核膜内膜裏打ちタンパク質ラミンと結合することを見出した。さらにHB-EGFの核膜局在化はPLZF、Bcl6等ある構造をもった転写抑制因子に結合することにより転写調節を行うことに対し、amphiregulinの核膜局在化は、ヒストンH3の修飾を変化させ、グローバルな転写を一時的に抑制することも明らかにした。
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