研究概要 |
本研究ではSTART-GAPと名付けられた低分子量GタンパクRhoファミリ-に対するGAPサブファミリーについて、それらの構造と機能を、細胞のがん化における役割の観点から解析した。 (1)START-GAP1に対する特異抗体を作成し免疫染色を行ったところ、細胞内および細胞周辺の細胞・細胞基質間接着を担う接着斑に局在化した。START-GAP1の接着斑局在化には、N末端側の約200アミノ酸領域(「FAT領域」と命名)が必要であった。この領域を過剰発現した細胞では、内在性START-GAP1が接着斑から解離し、細胞運動性および伸展性などの変化がみられ、START-GAP1が接着斑で機能することが明らかになった。 (2)FAT領域をさらに細分化し、これらのサブ領域の変異体の発現系を組み合わせて接着斑局在化に必須な領域をさらに絞り込んだ。また、接着斑構成因子の一つであるテンシンがSTART-GAP1のFAT領域近傍と相互作用することが報告されたために、上記変異体を用いてテンシンとSTART-GAP1_EAT領域との間の分子間相互作用の詳細を解析し、相互作用に重要な領域とアミノ酸残基を同定した。 (3)哺乳動物においてはSTART-GAPファミリーはSTART-GAP1,2,3の3つのアイソフォームからなる。これらのアイソフォームはある種のがん細胞に対して抗腫瘍活性を示すことが報告されていたが、START-GAP2,3の生化学的性質についての解析はほとんど無かった。我々は、これらがSTART-GAP1同様、RhoAとCdc42に対してGAP活性を示すこと、また、PLCδ1に対して活性亢進作用をもつことを明らかにした。 (4)START-GAP2,3に対するポリクローン性抗体を作成した。これらの抗体を用いて、内在性START-GAP2,3の細胞内分布を蛍光顕微鏡下において解析し、START-GAP1のそれと比較した。
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