研究概要 |
START-GAPとは、STARTドメインをもつRhoGAPである。哺乳動物には3種類のアイソフォーム(START-GAP1〜3)が存在し、これらは抗腫瘍遺伝子産物として働くが、その分子機構は不明である。本研究では、まずSTART-GAPIに注目し、その構造と機能の解析を行った。START-GAP1に対する抗体を作成し免疫染色を行ったところ、主に接着斑に局在化した。接着斑局在化には、これまで機能不明であったN端側の約200アミノ酸領域(申請者らにより「FAT領域」と命名)が必要であった。この領域を過剰発現した細胞では、内在性START-GAP1が接着斑から解離し、運動性および伸展性などの変化がみられ、START-GAP1が接着斑で機能することが明らかになった。FAT領域をさらに細分化した変異体の発現系を組み合わせて接着斑局在化に必須な領域をさらに約70アミノ酸領域に絞り込んだ。本研究を行っている過程で、接着斑構成因子の一つであるtensinがSTART-GAPと相互作用することが報告された。そこで上記変異体を用いてFAT領域内にあるSTART-GAP間で保存されたアミノ酸数残基がこの相互作用に重要であることを明らかにした。次にSTART-GAP2,START-GAP3の生化学的性質を、精製GST-融合タンパクを用いて解析した。これらはSTART-GAP1同様、RhoAとCdc42に対してGAP活性を、またPLCδ1に対して活性亢進作用を示した。さらにそれぞれに対するポリクローン性抗体を作成し、これらの抗体を用いて内在性タンパク質の細胞内分布を蛍光顕微鏡下において解析したところ、START-GAP3はSTART-GAP1と同様に接着斑局在化を示したが、START-GAP2はゴルジ体とほぼ同様の局在を示し、細胞内でアイソフォーム間での役割の違いが示唆される結果を得た。
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