リンパ球の生体内移動の中心的経路としてRap1/RAPL/Mst1を見出し、このシグナルカスケードの作用機構と生体での役割を解析した。 1) Mst1-Venusを発現させた細胞を用いて、ケモカイン刺激によってICAM-1に接着し移動する過程を、Z軸スキャンニング計測付き共焦点スキャナを用いて、高速(msec単位)で、追跡したところ、Mst1は、1秒以下で細胞の周辺領域から、細胞表面で先端膜へ移行後、接着面へ集積する過程が観察された。Mst1の集積によって細胞はその方向へ移動を開始した。また、GFP変異体であるpH感受性ecliptic pHluorinをLFA-1のβ鎖細胞外領域(小胞内腔側)、に挿入した分子を細胞へ発現させ、細胞先端部でのLFA-1が集積する過程を観察し、細胞内に存在するLFA-1がクラスター形成時に先端膜に融合することが判明した。Mst1はLFA-1の局在をダイナミックに制御し細胞遊走を促進している可能性が示唆された。 2) Mst1欠損マウスを作製し、このマウスにおけるリンパ球のIn vitroでの極性形成/接着・遊走と、生体内動態を解析した。Mst1欠損リンパ球はRAPL欠損リンパ球と同様にケモカインによる極性形成が低下し、In vitroでの接着カスケード(rolling/arrest/firm adhesion)を観察する系においてfirm adhesionの過程が顕著に低下していることが判明した。これと一致して、2次リンパ組織が著しく低形成であることが判明した。Mst1がリンパ球の動態制御に重要な役割を果たしていることが証明された。
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