研究課題
生体防御システムを支える免疫細胞の活発な生体内移動は、ケモカインを介する低分子量Raplの活性化に依存していることを見出し、その下流標的分子としてRAPLおよびRAPL会合分子Mst1を明らかにしてきた。Mst1は、in vitroにおいて、免疫細胞の細胞極性形成およびインテグリンLFA-1の前方でのクラスター形成に関与し、遊走の促進に重要な働きをすることを明らかにした。しかしながら、Mst1は、アポトーシス促進及び癌抑制分子としての働きが示唆されており、in vivoにおける機能は解明されていなかった。本年度は、Mst1ノックアウトマウスの作製に成功し、このマウスの免疫細胞にアポトーシス異常は認められず、ケモカインによって誘導される免疫細胞の極性形成の異常、インテグリンを介する接着および遊走の低下、2次免疫組織の低形成が認められた。このことより、Mst1のin vivoでの主要な機能は、Rapl/RAPLの下流で免疫細胞の極性形成と動態制御であることが明らかとなった(EMBO J, 2009)。さらに、本年度は、Mst1の下流を解明するため、Rapl依存性にリン酸化され、Mst1のノックダウンによってそのリン酸化が低下する分子群をプロテオミックスによって解析している。また、Mst1の下流でインテグリンの前方への極性形成へ関与するRab family分子の候補を、Mst1と会合し、細胞内においても共局在する5つの分子に絞り込んだ。本年度の研究成果は、免疫細胞の動態制御の分子メカニズムの全容解明に重要な手がかりとなると期待される。
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J. Immunol. 81
ページ: 6189-6200
EMBO J (In press)