研究概要 |
オートファジーの中心を担うオートファゴソーム(以下AP)という細胞内小器官が発見されてから今日まで,APを単離してタンパク質組成や脂質組成を分析しようとする様々な試みがなされてきた.しかし,これまでは細胞破砕液中のAPの安定性を検証する方法が限られていたことから,明確な結果は得られていない.報告者は,昨年度の研究を通じて,(1)細胞破砕液中では,APは浸透圧の低下に敏感に反応し,崩壊すること,(2)細胞破砕液中でAPを形態的に検出するには,積荷タンパク質であるApelの過剰発現が必須であること,(3)GFP-Apelを蛍光顕微鏡観察することによってAPの存在をモニターできることを示してきた(すべて未発表データ). 今年度はこれらのモニタリング法を利用し,密度勾配遠心法を用いてAPを濃縮した画分を得ることに成功した.質量分析法を用いて野生株とAP形成不能株の間のタンパク質組成を比較することにより,AP内部に取り込まれるタンパク質を網羅的に同定した.AP内部には細胞質タンパク質が非選択的に取り込まれるが,その中でも選択的にAP内部に取り込まれるタンパク質が複数個存在することがわかった.かつて我々のグループが同定したAld6もその一つである.Ald6がAPに選択的に取り込まれる機構は未知だったので,Ald6の分解を指標に細胞質タンパク質がAP内部に選択的に取り込まれる分子機構を解析した.本年度はその解析から同定された因子が他の細胞質タンパク質にも共通であるかどうかを確認し,その分子機構に迫ることを目標とする.
|