研究概要 |
以前、我々はアフリカツメガエルを用いて細胞外マトリックス蛋白質Del1(D__-evelopmentally-e__-ndothelial-l__-ocus1__-)を単離した。mRNA注入法による機能亢進実験,ならびにモルフォリノアンチセンスヌクレオチド(MO)を用いた機能阻害実験等によりDel1の初期発生での役割を解析してきた。 平成19年度までに、Del1はBMPシグナルを細胞内で抑制し背腹軸形成において必須の分子である事を報告した。 平成20年度は、Del1とBMP以外のシグナル経路との関係をより詳細に解析した。BMPシグナルの抑制因子であるChordinによって誘導される二次軸は頭部の構造を伴わないが、Del1を同時に過剰発現させることにより頭部形成が誘導された。このことは、Del1がBMPシグナル以外の機能にも関与していることを示している。一般に頭部形成にはBMPとWntシグナルの両方を抑制する必要があるため、Del1はWntシグナルの抑制因子としても機能すると考えた。そこで、この仮説を検証するために以下に示す実験を行い、Del1が効果的にWntシグナルを抑制することを明らかにした。 (1)ChordinおよびWntにより後方神経化させた予定外胚葉組織片(アニマルキャップ)がDle1の共発現により前方化した。また、この効果をWhtシグナルに応答するルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いて解析したところ、Del1により効果的に抑制された。 (2)FGF、NodalシグナルはDel1による影響を受けなかった。このことは、Del1はBMPおよびWntシグナルの特異的な抑制因子として機能していることを示している。 本研究によりDel1は主に頭部領域で発現し、頭部領域をBMPとWntシグナルから隔離する細胞外マトリックスとして機能することを明らかにした。
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