発生期にはたらく免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)に属する一連の膜タンパク質は、細胞膜上でのタンパク質-タンパク質相互作用を介して細胞内にシグナルを伝え、細胞の形態・接着・分化・移動・生存などの様々な局面での役割を担っている。我々は胚発生期にはたらく新しいIgSF分子をコードするProtogenin(PRTG)遺伝子を同定し、原腸陥入運動において、原条から沿軸中胚葉への細胞移動の過程で強く発現することに着目した。抗PRTG抗体を作成して細胞内局在を調べたところ、PRTGタンパク質の発現は細胞膜上に限局していた。ニワトリ原腸胚でProtogeninを強制発現して中胚葉細胞の移動を調べると、体節中胚葉の腹側で細胞塊を形成することがわかった。この過程をレーザー共焦点顕微鏡で三次元タイムラプス撮影したところ、これらの細胞の移動速度が正常より低下していた。またPRTGを発現させた培養細胞(L-cell)でaggregation assayをおこなうと細胞塊を形成することから、PRTGは細胞外領域を介して細胞接着に関与すると考えられた。さらにPRTG に対するsiRNAを原腸胚で作用させると、Protogeninの発現を阻害された細胞の原腸陥入が阻害されることがわかった。これらの結果からPRTGは原腸陥入運動において細胞接着に必要であり、陥入運動時に細胞群がひと続きになって陥入し、移動していくことに役立っていることが示唆された。
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