研究概要 |
私たちは、核膜内膜蛋白質のひとつであるMAN1が、TGF-β経路の制御因子であることをこれまでに明らかにしてきた。本研究の目的は、MAN1が核膜の構造蛋白質としてだけではなく、「シグナルの制御因子」としても働く、という私たちが独自に提唱した概念をさらに敷街すべく、MAN1が関与する新しいシグナル経路を見出すことであった。私たちはManl欠損マウス胚を用いた昨年度の研究で、Man1欠損胚では左側特異的に発現するnodal、Lefty 1, lefty2, pitx2が、その左右非対称な発現パターンを失い、左右両側で強く発現することを見出した。本年度は、Man1欠損胚においてNodalが左右両側性に、特に前方で強く発現する理由について調べた。Nodalの異所性の発現を誘導する因子としてX因子を想定して研究を進め、左右軸の決定、あるいはNoda1経路の制御に関わっていると考えられる様々な遺伝子のManl欠損胚における発現パターンを解析した。その結果、Bmp2がX因子の有力な候補のひとつである可能性を示唆する結果を得、これまでの結果と合わせて専門誌に報告した(Dev.Dyn.237,3565-3576,2008)。これは、核膜内膜蛋白質が左右軸の決定の制御にも関わることを明らかにした世界で初めての報告であり、「MAN1が関与する新しいシグナル経路を見出す」という本研究の目的を達成することができた。今後は、本研究の課題の一つであったジーンチップ解析の中で見つかった、Manl欠損胚で野性型胚に比べ発現が2倍以上増減した遺伝子の解析を進め、核膜とシグナル伝達の関係についてさらに研究を進めていく予定である。
|