研究概要 |
淡水魚の体表,特にエラに発達する表層イオン代謝細胞は,淡水中より様々なイオンを取り込み,体内のイオン濃度を一定に保つために必要不可欠な細胞群と考えられてきた。我々はエラが未分化なゼブラフィッシュ幼生の卵黄表面上に主に発達する表層イオン代謝細胞に注目し,遺伝子発現プロファイルと吸収するイオンの違いから,この表層イオン代謝細胞が少なくとも2種類,vH-MRCとNaK-MRCに分類されることを明らかにしてきた(Esaki et al, 2007)。 今年度は特にvacuolar-typeのH^+-ATPaseを強く発現し,Naイオンを吸収する表層イオン代謝細胞,vH-MRCに注目し,その発生・分化機構の解析を行った。我々はすでにfoxi3aがvH-MRCを含むすべての表層イオン代謝細胞の発生を制御するマスター遺伝子であることを明らかにしているが(Esaki et al, 2007),さらにfoxi3aと同じ遺伝子ファミリーに属するfoxilがfoxi3aと発現領域が重なり,かつ発現開始時期がfoxi3aよりも早いことを見いだした。Dr.Weinbergとの共同研究によりfoxilの突然変異体を解析したところ,foxilはfoxi3aの発現,およびvH-MRCの分化に必須であることを明らかにした(Esaki et al, 2009)。また,vH-MRCに特異的に発現する新たな転写調節因子gcm2を見いだし,その発現抑制実験からgcm2がvH-MRCの形成に不可欠であることを突き止めた。さらに興味深いことにgcm2はfoxi3aの発現開始には影響を与えないものの,その発現維持には必要不可欠であることがわった(Esaki et al, 2009)。
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