研究概要 |
淡水魚の体表,特にエラに発達する表層イオン代謝細胞は,淡水中より様々なイオンを積極的に取り込む機能を発達させた細胞群であり,淡水魚の体内イオンホメオスタシスに必須であると考えられる。ゼブラフィッシュ幼生の主に卵黄表面上に点在する表層イオン代謝細胞の形成にはfoxi3a転写調節因子が必要不可欠であるが,その作用機序についてはまだ説明できない点が多い。またfoxi3aのparalog遺伝子であるfoxi3bは,foxi3aと類似した発現様式を示すが,その機能は未知である。 今年度はこれらのfoxi3a/3b伝子の機能解析を進めるべく,ゼブラフィッシュにおける遺伝子破壊技術の習得を目指した。これまでゼブラフィッシュでは,morpholinoアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた発現抑制が遺伝子機能の解析方法として広く用いられてきたが,発現抑制の完全性,表現型の遺伝子特異性に常に注意を払う必要があるほか,受精後4日目以降は抑制効果が減衰する問題を抱えてきた。一方,最近,改変zinc-finger nuclease(ZFN)を用いた遺伝子破壊技術がゼブラフィッシュでも有効であることが示され,任意の遺伝子について欠損変異体を作製することが可能となった(Meng et al, 2008, Doyon et al, 2008, Foley et al, 2009)。我々はユタ大学のGrunwald教授との提携し,この新しい遺伝子破壊技術を独自に確立した。Wolfe教授らが確立したBacterial One-Hybrid SystemとJoung教授らが開発したOPEN Poolを組み合わせることで,標的遺伝子を破壊できる改変ZFNをより迅速にかつ効率よく作製できることを見いだした。今後はこの新技術を用いてfoxi3a/3b両遺伝子の欠損変異体を作製し,その機能解析を進める。
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