研究概要 |
本研究では、腱・靱帯細胞の分化マーカーであるTenomodulin (TeM)の発現を指標にして、腱・靱帯形成に関与するシグナル分子の実体を解明し、腱・靱帯細胞分化誘導システムの確立を目指している。本年度は、トランスジェニックマウス胚とラット腱細胞を用いた解析によって、マウスTeM promoter近傍に、腱・靱帯特異的発現制御を担うenhancerを同定した。当初、ニワトリ肢芽細胞を用いて、TeMの発現を誘導する転写因子を検索する計画であったが、同定したenhancerがマウス由来なので、哺乳類細胞(ラット腱細胞、ATDC5細胞、NIH3T3細胞)を用いて解析を進めた。enhancerには5つのE-boxとEts siteが含まれていたので、腱・靱帯で発現するb-HLH型の転写因子(E12、E47、Twist 1/2,Scleraxis)とEts転写因子(Pea3、Erm)をenhancerのluciferase reporterと共発現させ、転写活性を測定した。その結果、このenhancerには、Twist/E12が結合して転写活性を正に制御するE-boxが存在することが判明した。前年度に、Twist1/2は、Scxと同様にニワトリ腱細胞で過剰発現させるとTeMのmRNAレベルを上昇させることが明らかになっている。また、2つのE-boxと1つのEts siteを含む40 bpの領域を7コピー連結したluciferase reporterとTwist1/2、E12/E47、Pea3をラット腱細胞に共発現させると相乗的に転写活性が上昇した。TeMが発現していないNIH3T3細胞にTwist2/E12を共発現させても転写活性が3.5倍上昇した。このように、TeMの発現を指標として、腱・靱帯細胞分化の誘導に寄与する転写因子群の一端を明らかにすることに成功した。
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