研究概要 |
始原生殖細胞の移動過程において、生殖細胞とその周囲の細胞でダイナミックな発現様式を示すIfitm1に着目して解析を進めた。Ifitm1の始原生殖細胞での発現低下が、その前駆細胞集団の形成する細胞塊から内胚葉組織への移動に必須であるかを、まず全身性にIfitm1を発現するトランスジェニックマウスを作成して解析を行ったところ、内胚葉への移動した始原生殖細胞は観察されなかった。しかし、このような結果は、内胚葉特異的にIfitm1発現ベクターをトランスフェクションした培養マウス胚においても同様な結果が得られた事から、Ifitm1を生殖細胞において強制発現させた事によるものなのか、或は内胚葉においてなのか両方の可能性が考えられた。そこで、我々が同定した生殖細胞での発現を誘導するIfitm3の転写調節領域(Tanaka, et. al.,2004)を用いて、Ifitm1を始原生殖細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作出して解析を行った結果、Ifitm1の生殖細胞での発現低下がその内胚葉への移動に必須であることが示唆された。一方、Ifitm1 の周囲の体細胞での発現は、始原生殖細胞の存在する組織(内胚葉)では発現せず、逆に始原生殖細胞が離れていく前駆細胞集団が存在する組織(中胚葉)では発現している。siRNA を用いた培養マウス胚でのノックダウン実験の系を構築して、中胚葉での Ifitm1 のノックダウンを行った結果、始原生殖細胞が移動せず、中胚葉に留まっていることから、この実験系が機能していることが確認された。また、この Ifitm1 の発現制御の分子機構を解明する目的で、始原生殖細胞の移動に異常が観察されるLhx1ノックアウトマウスにおいて Ifitm1 の発現を調べたところ、その発現変化が認められたことから、Lhx1 が、周囲の体細胞での Ifitm1の発現を制御していることが推察された。
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