本研究の目的はDNAのメチル化ならびにそのメチル基転移酵素の幹細胞の決定と分化における機能を解明することである。そしてこれら幹細胞の性質を明らかにする事が将来、再生医療を行う上で不可欠な基礎研究となるものと考えられる。これまでに我々は、幹細胞の分化過程においてメチル基転移酵素である、Dnmt3b並びにDnmt3aが幹細胞特異的に発現されていることを明かにした。 平成19年度の研究において、さらにこれらメチル基転移酵素のマウス成体組織における詳細な発現解析をしたところ、新たに小腸のcrypt細胞や、網膜の一部の神経細胞なちびに大脳の脳室周辺で発生し、臭球へと向かう介在神経細胞の集団(RMS)や臭球内のNeuN陰性または弱陽性の顆粒細胞においてDnmt3aが強く発現されていることが解り、これらの細胞が比較的未分化神経細胞であることが示唆された。これらの結果は幹細胞の分化過程においてもDnmt3bからDnmt3aへの切り替わりが重要な機能を有していること、またDnmt3aが未分化な神経細胞のマーカーとなる可能性を示す結果となった。さらに今回、幹細胞の分化過程におけるメチル基転移酵素の機能を調べるため、Dnmt3aおよびDnmt3bとGFPの融合タンパク質またはGFPを共発現するベクターを作成し、ES細胞にトランスフェクションを行い それぞれの融合遺伝子を恒常的に発現するES細胞株を樹立したこれらの細胞では各メチル基転移酵素がそれぞれ特徴的な核内での局在を示すこと、またその挙動をGFPの蛍光として、リアルタイムに追跡することが可能であることが確認された。現在これらのES細胞に分化誘導を行い、各メチル基転移酵素の幹細胞からの分化過程における、核内での挙動を解析するとともに、他のメチル基転移酵素の発現量を改変したES細胞株の樹立、ならびに、これらのES細胞を用いたキメラマウスの作成を進行中である。
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