研究概要 |
平成20度の研究において、メチル基転移酵素のマウス成体組織における詳細な発現解析をした結果、大脳の脳室周辺で産生され臭球へと向かうPSA-NCAM陽性、NewN陰性の未分化な介在神経細胞の集団(RMS)ならびに臭球内の顆粒細胞においてDnmt3aが強く発現されていることが判明した。本研究によりDnmt3aが未分化な神経細胞の分化過程で特異的に発現されることが明らかとなり、我々が提唱している、胚発生や生殖細胞の幹細胞の分化過程だけでなく、成体組織の幹細胞の分化過程においてもDnmt3bからDnmt3aへの切り替わりが必要とされているという新規型メチル基転移酵素の機能モデルを証明する結果となった。またこの結果はDnmt3aが未分化な神経細胞のマーカーとなることを示しており、今後まだ明らかにされていない新規の神経幹細胞の探索に有用となることが考えられる。今回さらに、Dnmt3aおよびDmt3bとGFPの融合タンパク質を恒常的に発現するES細胞株を樹立した。これらのES細胞株では蛍光として観察される、それぞれ特徴的な核内での局在が,内在性のDnmt3aならびにDnmt3bと同一であり、ES細胞の分化過程における核内での挙動の変化をリアルタイムで解析が可能となった。されにこれらES細胞株由来のキメラマウスを現在までに数匹得ており、現在これらのマウスの交配により、ES細胞由来のトランスジェニックマウスを作成中である。これらのマウスが得られれば、胚発生過程ならびに成体幹細胞をはじめ、すべての細胞でのDnmt3aならびにDnmt3bの細胞内での挙動がリアルタイムで解明されるものと考えられる。
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