研究概要 |
哺乳類の口腔天井を構成する二次口蓋は,上顎隆起ロ腔側に形成される口蓋板が水平方向に伸長し,正中で融合してできる。本研究では二次口蓋の形成過程を理解するため,ヒトX染色体連鎖型口蓋裂の原因遺伝子であるTbx22に注目した。Tbx22はヒトやマウス胚では口蓋板間充織で発現する。一方,口蓋板が融合しないニワトリ胚でもTbx22の発現が報告されているため,Tbx22は口蓋板融合ではなくその初期形成に関与すると推測し,本研究ではその発現調節や機能解析を目指している。本年度は,Tbx22発現領域の再検討と,発現調節に関与する分子の探索を重点的に行った。 Tbx22は口蓋板形成の48時間ほど前から上顎隆起の口腔側で発現していた。同時に下顎隆起の一部や外側鼻隆起でも発現していたので,この発生段階でのTbx22は口蓋板形成とは別の機能を担うと予想された。発生が進行すると,Tbx22の発現は口蓋板間充織細胞と舌底部に限定され,口蓋板と舌形成への関与が示唆された。次に上顎隆起におけるTbx22の発現調節機構を調べた。一般に,二次口蓋形成には口腔上皮と間充織細胞との相互作用が必要なため,口腔上皮を除去してTbx22の発現を調べた結果,上皮除去後24時間以内に発現は消失した。Tbx22の発現調節に関わる上皮性因子として,主要な分泌性蛋白質の作用を検討したところ,BMP-4はTbx22の発現を抑制し,BMPアンタゴニストのNogginはTbx22の発現を促進した。そのため,上顎隆起内にBMPシグナルの偏在があり,これによりTbx22の発現が調節されると予想された。BMPファミリーおよびNogginとTbx22の発現の対応については,現在解析中である。
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