研究概要 |
本研究課題では、主にツメガエル胚を用い、脊椎動物の脳の部域がどのように規定されるかについて、その分子メカニズムの解析を目指して研究を行っている。 (1)マイクロアレイによって同定した頭部領域特異的な発現を示すいくつかの新規因子について、さらなる解析を行った。一つは、レチノイン酸代謝酵素xCyp26c1について、頭部領域の正しい規定に役割を果たしていることを確認し、得られた結果を論文に公表した(Tanibe et al., 2008)。また、レチノイン酸合成酵素xRa1DH2についても解析を行い、発現のWntシグナリング依存性を見出した。 (2)SETドメインを有しヒストンメチルトランスフェラーゼをコードするPRDM12遺伝子について、過剰発現・発現欠損によるツメガエル胚での影響を調べた。興味深いことに、PRDM12は神経誘導能を有し、過剰発現により神経マーカーの上昇を認めた。 (3)前方神経外胚葉に元来備わる位置龍の有無を調べるため、マイクロアレイにより背側外胚葉、腹側外胚葉、その境界部で発現に差がある遺伝子の同定を行った結果得られた新規遺伝子について解析を行った。ただ、現時点では過剰発現等による明確な脳部域の乱れは確認できなかった。そのため、解析すべき発生ステージを少し変えて再度マイクロアレイを行った。その結果、背腹領域で大きな差があるもの、背・腹境界領域のみで発現が上昇する膜タンパク質など新たな候補遺伝子を単離することが出来た。 以上のように、今年度はおおむね計画通りの成果を得ることが出来たと考えている。
|