研究課題
申請研究は、表題にある古代魚孵化腺細胞の発生進化学的研究に加え、卵膜分解機構の進化研究の2題を含んでいる。前者においては、チョウザメ孵化酵素の精製を試みた。孵化液よりタンパク分解活性を検出し、幾つかのカラムクロマトグラフィーを行ったが、いまだ精製にいたっていない。後者においては、国際誌に4報の論文が受理され十分な成果を挙げた。以下に記す。硬骨魚類孵化酵素は、最初は単一酵素であったものが、進化過程で重複・多様化により複数の酵素に進化したことが分子系統解析よりわかっている。孵化酵素の機能進化を考察するため、複数の魚種より孵化酵素を精製した。ゼブラフィシュとウナギは、それぞれが単一酵素の分解系であることを示した。孵化時に卵膜は軟化され、胚は自身の運動により軟化した卵膜を破いて孵化する。一方、メダカは、2種の酵素(MHCE、MLCE)により卵膜を完全分解される。ゼブラフィシュ(ZHE1)とウナギ孵化酵素(EHE)の卵膜分解の特異性を調べると、それは、メダカ孵化酵素の一つ、MHCEと類似しており、MLCEとは異なっていた。この結果から、ウナギ、ゼブラフィシュの孵化時の卵膜分解機構は、硬骨魚類のオリジナルな形であり、メダカは、祖先型酵素に加え、進化過程で多様化したもう一つの孵化酵素(MLCE)を獲得することでより効率のよい分解形を獲得したと推察される。卵膜の切断部位を調べると、膨潤化酵素(ZHE1,EHE,MHCE)は、卵膜タンパク質のN末端領域を切断し、MLCEは、卵膜コア構造と考えられるZPドメインの中央を切断する。このことは、孵化酵素の卵膜分解が卵膜構造依存的にあり、MLCEが新規の機能を獲得したことを示している。今後は、系統解析で得られている膨潤化酵素から多様化したもう一つの孵化酵素(グループB遺伝子)を加え、基質特異性の変化を分子レベルで解明していく予定である。
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