研究概要 |
現存しない古代生物のグロビン(祖先型グロビン)のアミノ酸配列を予測し(逆分子進化)、実際に合成してそれらの構造・機能解析を行う研究の一環として、2009年度は以下の成果を得た。 従来の研究で合成した2つの祖先型ミオグロビンである哺乳類祖先型n80-Mbと魚類祖先型n182-Mbならびに、それらの現存種MbであるキタアメリカオポッサムMb(Nao-Mb)とゼブラフィッシュMb(Zbf-Mb)の諸特性が、今回の大腸菌を用いた蛋白発現・精製の過程での人工的な影響を受けないで、本来の特性を示すかどうかを検証する目的で、野生型組換えマッコウクジラMbを合成し、天然のMbと比較したところ、両者は酸素親和性、吸収スペクトル、SDS-PAGEに関して同一の特性を示した。従って、今回の蛋白合成技術は人工的な影響を与えないことが証明された。 上述の2つの祖先型および2つの現存種のMbのX線結晶構造解析を行うため、それらの蛋白質の結晶化を種々の実験条件で試みたが、成功しなかった。さらに、条件を変えて試みたい。 祖先型ミオグロビンからの発展として、脊椎動物の祖先型ヘモグロビンのアミノ酸配列を設計するために、アミノ酸配列データベースから約1,500個のグロビン配列のデータを収集し、(1)TREE-PUZZLEプログラム使用、WAGモデルによる距離行列の作成とガンマ補正値の計算、(2)近隣結合法(Phylipプログラム)、最尤法(PhyMLプログラム)を用いた脊椎動物の進化系統樹の作成を行った。さらに進化的に重要な位置をしめる(1)ヤツメウナギ、(2)ヌタウナギ-ヤツメウナギ、(3)回帰性魚類(サケ類-ウナギ類)の祖先型Hbのα鎖、β鎖のアミノ酸配列推定と遺伝子設計を行い、蛋白発現の準備を完了した。
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