魚類グループは、動物系統発生的に重要な位置を占めており、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の進化研究においても大変重要なグループである。これまでの研究により、MHC分子群は最も原始的な有顎脊椎動物である軟骨魚類において初めて出現して来る事が明らかとなって来た。魚類よりMHC関連遺伝子群を明らかにし、遺伝子構造解析等を実施する研究計画を昨年同様進めている。新たに得られるMHC関連遺伝子群の配列及びその他の情報の詳細な解析を行う事により、MHC分子群の分子進化の理解を進展させることを目的としている。種々のデータベース解析と、実際にゲノムDNAまたはcDNAを用いたPCR実験法を組み合わせて、候補遺伝子断片の解明を昨年に引き続き実施した。今年度は、PCR法により候補遺伝子の断片を単離した後、RACE法により、全長のcDNAを単離する方法も進めた。ゲノムDNAを基質としてPCRを行い、産物を解析して、遺伝子のゲノム構造に関する情報を得る事を試みた。サザン解析により、候補遺伝子のコピー数を解析し、RT-PCRにより、発現状態の解析を試みた。これまでに得られた遺伝子情報に基づき、既知のMHC分子群構成メンバー等との配列比較解析を進めている。また、魚類のゲノム中で、MHC遺伝子群に近い領域に位置する関連遺伝子群の解析もMHC関連遺伝子群の網羅的解明に有用であり、それらの解析も行っている。MHC分子群の反応系に登場する他の重要な分子群のゲノム情報解析も同時に進めている。
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