研究概要 |
霊長目ADH遺伝子クラスターの比較ゲノム解析 ヒト肝臓で発現し、アルコール代謝の中心的役割を担う3つのクラスIアルコール加水分解酵素(ADH)遺伝子について霊長目(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン、ヒヒ)でイントロンの塩基配列決定とヒトとの比較解析をおこなった。その結果、調べた霊長類には少なくとも3つクラスI ADH遺伝子が存在し、それらは互いに非常に高い相同性を示すが、遺伝子変換による均質化の証拠は見られず、それぞれ独立に進化したパターンを示した。この結果から、これら3つのADH遺伝子は、それぞれの種で3つそれぞれ異なる役割と機能を担って進化してきた可能性を示唆した(Oota, et al., 2007)。 ヒト高Fst-SMPをもつ遺伝子の野生メダカ地域集団における多型スクリーニング HapMap、dbSNPなどのデータベースを活用し、ヒト適応進化の観点からヒト集団間で高F_<st>-SNPを示す12遺伝子座について着目し、これら遺伝子について野生メダカ29集団を用い多型スクリーニングを行なった。その結果、THEA2遺伝子で日本メダカとフィリピンメダカの間に、ヒトと同じ位置に非同義置換を発見した。また同様にRTTN遺伝子では、南日本メダカ、北日本メダカ、東韓メダカ、西韓メダカにおいて、ヒトで多型が見つかる同じエクソンを含む領域に非同義置換を発見した。驚くべきことに、この領域では同義置換は皆無で、しかも非同義置換は地域集団特異的であった。THEA2は温度感受的発現を示す遺伝子で、RTTNは体軸形成と関係があると考えられている遺伝子である。このように着目したヒトで適応進化のシグナルを示す遺伝子は、メダカにおいても適応進化の可能性を示し、脊椎動物で共通に環境適応と関係する可能性のある遺伝子をこの方法で効率よくスクリーニングできることを示した(論文投稿中)。
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