昨年度設定した基準((1)耳垢型決定遺伝子を解析する前にミトコンドリアDNAが解析され、スタッフおよび古人骨の整理等に携わった人と塩基配列が一致した場合には除外する、(2)耳垢型遺伝子の特定には、少なくとも5回以上の解析結果から行う)にしたがって、佐賀県安永田遺跡出土の渡来系弥生人骨43体の試料から耳垢型決定遺伝子(ABCC11上のrs17822931)の解析を試みた。ミトコンドリアDNA解析は、D-loop HV1領域を行った。43例中26例で増輻がみられたが、実験者と塩基配列が一致した4例を除く22例のDNAサンプルについて、耳垢遺伝子の解析を進めた。PCRは2段階で行い、1段目で123塩基対(プライマーを含む)、2段目で94塩基対を増幅した。それぞれのサンプルについて18回のPCRを行った結果、1回以上増幅したものは14例であったが、基準の5回をクリアしたのは2例であった。2例の遺伝子型はGA(湿型)が1例、AA(乾型)が1例である。 これらの成果は日本人類遺伝学会第53回大会で発表したが、上記の方法では効率が悪いことが明らかとなったので、現在はPCRで増幅させる塩基対をさらに短くして解析を進めているところである。昨年度および今年度の研究で、古人骨のゲノムDNA解析は、ミトコンドリアDNA解析に比べると極端にPCR増幅率が低下することが明らかとなった。しかしながら、古人骨からも耳垢遺伝子の解析が可能であることも、また明らかとなった。本研究は、日本人の由来や形成の問題にも関わることなので、慎重にまた辛抱強く行っていきたい。
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