肝臓の胆管は、肝細胞から小腸へ胆汁を排泄する流路であり、その機能を発揮するためには、チューブ構造を形成しなければならない。本年度の研究では、胆管の形態形成の分子メカニズムを明らかにするために、(1)肝前駆細胞株HPPLの3次元培養でのチューブ構造誘導系の構築、および(2)胆管形態形成を制御する遺伝子の探索を行った。チューブ構造誘導系については、マトリゲルを含む培地でHPPLが形成したシストを、ゲル溶解溶液を用いて培養系から分離してコラーゲンに包埋後、高濃度のHGFで刺激することによりチューブ構造の誘導を試みた。しかしながら、チューブ構造の誘導効率が非常に低かったので、現在さらなる培養条件の検討を行っている。一方、胆管形成を制御する遺伝子を新たに同定するために、胎生14日肝臓より分離した肝芽細胞と新生児肝臓から分離した胆管上皮細胞の遺伝子発現を、マイクロアレイを用いて比較した。マイクロアレイの結果から、新生児胆管上皮細胞で発現が上昇することが示唆された遺伝子について、定量PCRを行って発現の変化を確認した。その結果をもとに、胆管上皮細胞で発現が上昇していることが確認された分子を、胆管形成を制御する候補とした。次に3次元培養での機能解析を行うために、cDNAのクローニングおよび発現ベクターの構築を行った。また、市販の抗体が得られたものについては、肝臓での発現パターンを検討した。その結果、膜タンパク質Map17および転写因子Sox9については、胆管上皮細胞での発現の上昇およびタンパク質レベルでの胆管での発現を確認した。現在、3次元培養系での過剰発現およびノックダウンを試みることにより、Map17およびSox9の機能解析を進めている。
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