枯草菌では、GABAを唯一の窒素源として利用できることや、GABA透過酵素についての詳細が研究されているが、GABA代謝系を担う他のタンパク質についてはそれほど研究が進んでいない。そのGABA代謝を担うのが、GABAアミノ基転移酵素とコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素である。更に、それら2種の酵素は、培地中のGABAで発現誘導されるオペロンにコードされており、オペロンの上流にコードされているGabRが、そのオペロンの転写制御因子として働いている。 本研究では上に挙げたオペロン上で隣接する三つのタンパク質の立体構造を決定し、生化学的、分光学的研究の結果と総合して、原子レベルでの構造・機能解析を行うことを目的としている。 研究最終年度の本年度では、C末端にHis-tagの付いたGabR、およびN末端にHis-tagの付いたGabRの結晶化の最適化を行い、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設(PF、およびPF-AR)を用いたX線回折強度データ測定により、それぞれ2.4、および2.2A分解能のデータを得ることに成功した。さらに最近、Hg誘導体を用いた重原子同形置換法により、C末端にHis-tagの付いたGabRの位相の決定に成功した。現在は、この決定した位相を基にした電子密度をもちいてモデルの構築を行っている。コハク酸セミアルデヒドについては、大腸菌を用いた大量発現を行い、カラムクロマトグラフィーによる精製を終了している。この精製サンプルを用いて結晶化条件のスクリーニングを行っているが、未だ有望な結晶を得ることができていない。そのためサンプルの精製度の向上や結晶化時の温度の最適化を含めた条件の検討を行う。GABAアミノ基転移酵素については、昨年度に酸性の結晶化条件での立体構造を決定することに成功したのに引き続き、中性の結晶化条件での結晶化、データ測定、および立体構造の決定にも成功した。今後は、酸性、および中性での基質アナログ複合体の結晶化条件の検索を行い、GABAアミノ基転移酵素の反応メカニズムを明らかとする。
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