ミオシンVは二本の`足'をもつリニアモーター蛋白質である。ATPが結合してアクチン線維から解離した後足を、アクチン線維に結合している足の前方に着地させることにより、一見人間のように`歩く'と考えられている。この前方着地を確実にするには、アクチン線維から解離した足の`つま先'が下がる(足の裏が前方でアクチン線維に結合できる向きになる)ように`足首'の角度が制御されていることが重要だと考え、その仕組みを明らかにしようとしている。 Caged ATPとUV照射を用いて任意のタイミングでATPを産生した直後に、足首の動きを反映していると考えられるビーズが角度変化し(元の角度→二つ目)、平均約40秒後に元の角度に戻ることが観察された。生化学的な方法により測定した反応速度の値と比較することにより、二つ目の角度の滞在時間はリン酸の解離が律速であることが分かった。構造の研究から示唆されていた、ヌクレオチドに依存した二つの角度が存在することが確認されたと同時に、リン酸解離待ちの二つ目の角度(これまでの研究からつま先を下げた構造だと考えられる)が安定して存在することが明らかになった。これは歩行中において、アクチン線維から解離した足がつま先を下げた構造を保ち、結合していた部位(後方)に再結合するよりも前方に着地する確率を高めていることを示唆している。ミオシンVはATPの加水分解サイクルから得られるエネルギーを用いてアクチンから離れたときの足首の角度を積極的に制御し、一方向性運動を確実にしていると考えられる。これらの成果を投稿準備中である。
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