研究概要 |
本研究は、(1)申請者らがこれまでに育成したダイズとツルマメの交雑に由来する組換え自殖系統ならびに硬実性QTLに関する準同質遺伝子系統を用いて、硬実性の要因と考えられるキシラン合成に関与するα-キシロシル転移酵素ならびにリグニンおよび縮合型タンニンの合成に関与するラッカーゼを支配する遺伝子を単離して遺伝子構造を決定し、ダイズ連鎖群上の位置を同定して硬実性QTLとの対応関係を明らかにすること、また、(2)硬実性に関与する物質的基礎として、種皮中のキシランとリグニンを定量し、かかる遣伝子の作用性と両物質の生合成の関係を明らかにすることを目的としている。 公開されたダイズゲノム情報を基に、硬実性QTLと連鎖するSSRマーカーを手がかりとして、効果の最も大きいD1b連鎖群上の硬実性QTLの座乗領域を特定した。硬実性に関与すると考えられる候補遣伝子を領域内で探索した結果、ラッカーゼを支配する遺伝子が存在した。この遣伝子のホモログはB1,B2およびG連鎖群にも座乗していた。硬実性QTLに対応するラッカーゼ遺伝子について、D1b連鎖群にある硬実性QTLに関する準同質遺伝子系統から当該遺伝子を単離し、クローニングした後、それらの塩基配列を決定した。単離された遺伝子は5個のエキソンからなり、他のホモログとは一部のエキソンが欠失している点で異なっていた。硬実系統と吸水系統の塩基配列には、いくつかの塩基置換が認められ、また、開始コドンの上流に8塩基の欠失/挿入変異が観察された。 今後これらの発現様式ならびに種皮のリグニン組成を準同質遺伝子系統間で比較することにより、硬実性QTLの原因遺伝子を同定することができる。
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