野生遺伝資源を有効かつ効率良く利用するには、野生型に含まれる遺伝的変異の構造や野生型と栽培型を分かつ栽培化症候群の遣伝的基礎を理解する必要がある。栽培化症候群の一要素である、種子の硬実性の遺伝的機構をDNAレベルで明らかにすることができれば、形質進化の機構を理解する一助となるばかりではなく、同定された遺伝子のDNAレベルでの多型解析から、「単起源か多起源か」といったダイズにおける進化的問題に答えを与えることができる。本研究の目的は、ツルマメの硬実性の遺伝機構を明らかにすることである。 過去2年間の研究において、ツルマメの硬実性に関与するQTLを同定し、公開されたダイズゲノムシークエンス情報を基にそれらの座乗領域をおおよそに特定づけた。その領域にある、種皮構造に関与すると考えられたリグニン生成に関与するラッカーゼ遺伝子の配列解析ならびに発現解析を行ったが、硬実性QTLの候補として強く支持する結果は得られなかった。そこで、新たにDNAマーカーを開発し、座乗領域を約70kbの領域に特定づけることができた。 硬実性の原因因子を同定するために、野生系統から硬実性QTLを導入した戻し交雑後代からDNA標識を利用して硬実性QTLに関する準同質遺伝子系統を作出した。これらの系統は、他の形態的特性で異ならず、このQTLの表現型に及ぼす影響を理解するうえで有用である。これらの材料を用いて、TOF-MS解析を行った結果、両系統間の子葉の成分組成には顕著な差異は観察されなかった。
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