研究概要 |
本研究は,ナタネ(ACゲノム,n=19)にダイコン(Rゲノム,n=9)の染色体を1本ずつ添加した1染色体添加系統を育成し,添加染色体の持つ有用形質の解明とナタネ育種への利用を目的としている。このためには,宇都宮大学で保存している2系統の人為合成複二倍体(RA89系とRb63系)にナタネを連続戻し交雑して,(1)細胞質の異なる2種類の1染色体系統(核置換系と核復帰系)の育成,(2)根こぶ病抵抗性遺伝子の同定と早期選抜のための特異マーカーの開発,および(3)核および細胞質の有用形質の解析を行う。平成19年度は,核置換系(RA系)および核復帰型(Rb系)のBC_1植物(2n=47前後)からBC_2植物を養成した。前者では83個体の体細胞染色体数を調査し,後者は62個体のそれを調べたところ,2n=34〜48であり,1染色体添加型ナタネ(2n=39)が得られるものと考えられた。また,2n=39〜43を持つRA系植物14個体を用いてダイコンRAPD特異的マーカーの検出を試みたところ,99種類のプライマーから合計232本の特異マーカーを得た。これらマーカーを用い,個体間における検出パターンの違いから7つのグループ(a〜g)に分類できた。一方,Rb系の10個体を用いてタイプ分けしたところ,さらにhタイプを識別した。両系統の形態的特性は,前者ではb〜gタイプは雄性不稔性を示したが,aタイプは高い花粉稔性であった。後者は正常であった。また両系統から出現したgタイプの花色は白色であった。以上のことから,a染色体には花粉稔性回復因子が,またg染色体にはダイコンの白色花の形質因子が座乗していると推察した。ダイコン添加染色体の次代への伝達状況をみると,核置換系では93%(eタイプ)から3%(gタイプ)であり,核復帰系では73%(eタイプ)から30%(bタイプ)までの変異が見られた。
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