研究概要 |
本研究は,ナタネ(ACゲノム,n=19)にダイコン(Rゲノム,n=9)の染色体を1本ずつ添加した1染色体添加系統を育成し,添加染色体の持つ有用形質の解明とナタネ育種への利用を目的としている。このためには,宇都宮大学で保存している2系統の人為合成複二倍体(RA89系とRb63系)にナタネを連続戻し交雑して,(1)細胞質の異なる2種類の1染色体添加系統(核置換系と核復帰系)の育成,(2)根こぶ病抵抗性遺伝子の同定と早期選抜のための特異マーカーの開発,および(3)核および細胞質の有用形質の解析を行う。平成19年度は,核置換系(RA系〉および核復帰系(Rb系)のBC2植物から,前者ではhを除くa〜iの8タイプを,後者からはa〜iの全9タイプを育成した。また,これらのRAPD特異マーカー数は,hタイプの10本からaタイプの42本の合計175本を同定した。両系統の形態的特性を調査し,前者のb〜iタイプは雄性不稔性を示したが,aタイプは花粉の稔性が回復した。後者はすべてのタイプが正常であった。平成20年度は,有用形質のうち,(1)ダイコンの持つ橿こぶ病抵抗性,および(2)種属間交雑を困難にするP(種の壁を形成する)と考えられる要因のひとつである低稔性について解析した。その結果,根こぶ病抵抗性は,cタイプに強くみられ,ダイコンのc染色体にこの抵抗性遺伝子(群)が座乗している可能性を明らかにした。また,d添加染色体はナタネの胚発育を極端に遅らせるとともに,胚形成を悪くした。このことから,種子稔性の低下は受精前の障害ではなく,受精後における胚の発育不全に起因することを明らかにした。
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