ダッチアイリスにおいて、コピグメンテーションを強く発現している青紫品種「Blue Diamond」の外花被の各発育時期における7種類のアントシアニン生合成遺伝子(CHI、F3H、DFR、ANS、3GT 5GT及び3AT)の発現レベルを解析するとともに、各遺伝子の発現レベルとアントシアニン及びフラボン量との関係も調査した。その結果、「Blue Diamond」花蕾の発達段階を5ステージに分けて行った調査では、アントシアニン生合成遺伝子はステージ1から4にかけて高い発現レベルを維持しており、それに付随してアントシアニンの蓄積は花弁の発達が進むにつれて増加、開花直前のステージ4において最大となることが明らかになった。このように、花の時期及び器官においてアントシアニンの蓄積量と生合成遺伝子の発現レベルはよく対応しており、アントシアニン生合成がそれぞれの反応を触媒する酵素遺伝子の転写レベルで制御されていることが示唆された。これに対して、フラボン蓄積量はアントシアニン蓄積量が増加するとともに減少した。 さらに、ダッチアイリスの青紫品種「Blue Diamond」、白色品種「White Wedgewood」及び複色品種「Surprise」における花器官別にCHI、F3H、DFR、ANS、3GT、5GT及び3AT遺伝子の発現レベルを解析するとともに、これら遺伝子の発現レベルとアントシアニン及びフラボン量との関係も調査した。その結果、「Surprise」の外花被及び雌蕊の白色化はDFR遺伝子発現の顕著な減少に、一方「White Wedgewood」の内、外両花被及び雌蕊の白色化はDFR遺伝子発現の欠損または顕著な減少に起因することが明らかになった。最後に、アントシアニン生合成遺伝子の代表的な転写因子、Mybの単離を試みたが、そのcDNAクローンを獲得するまでには至らなかった。
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