玄米にホスホリパーゼD(PLD)の欠失性を導入することにより、品質劣化が抑制されて、貯蔵性が向上した米を作出することを最終目標とする。そのために、PLD欠失性を簡易に実用品種へ導入するための技術として、PLD欠失性原因遺伝子のマッピングを行う。具体的には、PLD欠失系統とPLDを有する品種とのF2株を栽培し、PLD欠失性とSSRマーカー等との連鎖解析を行う。また、登熟期間中の種子等におけるPLD遺伝子の発現調節機構を明らかにする。更に、担当者らが蓄積している脂質過酸化酵素欠失イネに関する材料と情報を活用し、PLD欠失性玄米における脂質貯蔵細胞顆粒の安定性を明らかにする。 PLD欠失性の連鎖解析。03-s108とコシヒカリの交配に由来するF2株葉身よりDNAを抽出した。また、F2株あたり10-20粒以上のF3種子中のPLDの有無を解析し、F2株の遺伝子型を判定した。これらを元にPLD欠失性とSSRマーカーとの連鎖解析を行った。 PLD欠失性の連鎖解析。種子PLD遺伝子は第1染色体にAB001920=RPLD1(24.0cM)として登録されている。そこで、この近傍で03-s108とコシヒカリの間に多型を生じるSSRマーカーを検索し、RM6331(10.9cM)、RM3453(25.0cM)、RM6740(73.4cM)を見出した。03-s108とコシヒカリの交配に由来するF2株を対象にPLD欠失性の連鎖解析を行ったところ、PLD欠失性はRM3453と4.5%の組み換え価で連鎖することが明らかになった。なお、RM6331とは14.8%であった。これらの結果は、AB001920が種子PLDである可能性が高いことを示している。
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