玄米にホスホリパーゼD(PLD)の欠失性を導入することにより、品質劣化が抑制されて、貯蔵性が向上した米を作出することを最終目標とする。そのために、PLD欠失性を簡易に実用品種へ導入・選抜するための技術として、PLD欠失性原因遺伝子のマッピングを行う。具体的には、PLD欠失系統とPLDを有する品種とのF2株を栽培し、PLD欠失性とSSRマーカー等との連鎖解析を行う。また、PLD欠失性遺伝子の構造を解析し、その特徴を利用したDNAマーカーを用いた簡易な選抜方法を開発する。 平成20年度までに、原品種でトリプロファンをコードするTGGが、PLD欠失系統「03-s108」においては、終止コドンTGAとなる変異、一塩基置換SNPが生じていることを明らかにした。本年はこのSNPを利用したPLD欠失性の簡易な選抜方法を2種類、開発した。CAPS法によると、一塩基変異を含む領域のPCR産物を制限酵素PsrIで処理することにより、DNAの塩基配列の違いを検出可能となった。また、ドットフロットSNP法により一塩基の違いを点のシグナルとして判定でき、大量の試料を解析することが可能となった。これらDNAマーカーを利用することにより、簡単な操作でPLD欠失イネ品種の早期選抜ができ、品種育成の効率化が期待される。
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