研究概要 |
(1)白山における自生種のハクサンオオバコと侵入雑草であるオオバコとを識別できる核DNAおよび葉緑体DNAの遺伝マーカーを開発して,白山の南竜ヶ馬場で採取したオオバコ類について遺伝マーカーの型を調べたところ、オオバコとハクサンオオバコとの自然雑種個体が生育していることが明らかとなった。雑種は両種のいずれを種子親(母親)とした場合でも形成されているが、オオバコを種子親にもつ雑種個体の方が数が多く、分布範囲も広かった。また、オオバコを母親にもつ雑種では,F_1の分離や戻し交雑によって生じた後代が自生していることが示唆された。現在のところ、白山におけるオオバコとハクサンオオバコの雑種形成は南竜ヶ馬場のテントサイトに限られているので、形態的特徴や遺伝マーカーを用いてオオバコや雑種個体を識別して、オオバコの侵入や雑種の拡散動態を監視したり、優先して駆除する範囲を設定するなどの対策が可能と考えられた。 (2)白山の南竜ヶ馬場で外見上セイヨウタンポポとみなされる個体の生育を確認した。前年に室堂で発見された外見上セイヨウタンポポとみなされる個体とあわせて全草を採取し、アイソザイム分析による種および雑種の物定を行っている。 (3)携帯型GPSを用いて白山におけるスズメノカタビラの分布調査を行ったところ、標高2450m付近がスズメノカタビラの分布限界であると推察された。白山の高度の異なる数箇所で採取したスズメノカタビラを用いた侵入高度別の生活史の比較では、高山帯・亜高山帯の集団は出穂までの期間が極めて長いこと、小穂数が少ないこと、低温条件下ですぐれた発芽特性を示すことが明らかとなった。
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