研究概要 |
白山をモデル地域として,高山に侵入した雑草による害を評価し,その予防について考察することを目的に,1)高山・亜高山帯における雑草害の評価:i)侵入雑草と自生種との交雑の可能性と実態の解明および交雑が起こりうる条件の評価,ii)植生分布調査とGISを用いた侵入雑草の量的把握;2)高山・亜高山帯に侵入した雑草の生活史特性;3)高山・亜高山帯への雑草の侵入経路の解明を計画した。 1-i) および3)として,白山に侵入した外来タンポポの実体を,形態的形質,倍数性および核と葉緑体の遺伝子マーカーを組み合わせて調査した。採集地点間で種や雑種型の構成比率が異なり,高山帯や亜高山帯では一部の種(アカミタンポポ)や雑種型(三倍体雑種)が優占していたことから,侵入したわずかの個体が繁殖して増加したものと考えられた。また,外来種型葉緑体マーカーの三倍体雑種が検出されたことは,外来タンポポが受精能力のある卵細胞を形成し種子親となる可能性を示唆している。 1-ii) として,白山の亜高山帯および高山帯における主要な侵入雑草であるスズメノカタビラとオオバコの分布を携帯型GPS端末で記録し,分布の相違を種間平均こみあい度を用いて解析した。両種の分布は排斥的であったことから,分布適応様式が異なっていると推定された。 2) として,白山の高山帯に侵入したスズメノカタビラ集団は,低地の集団よりも低温での種子発芽が良好で,25℃では生育が抑制されることから,高山帯の環境に適応した集団として定着していることが示唆された。
|