研究概要 |
本年度では,以下のことを目的として実験を行った. (1)塩ストレス下における普通ソバ,ダッタンソバおよび宿根ソバの生育・収量を調べ,耐塩性の強弱と体内のナトリウムイオン含有率を明らかにする. (2)ソバの茎と根の内部形態を観察して,塩ストレスがソバの内部形態に及ぼす影響を調べるとともに木部・篩部を特定し,ESEMとX線微量分析装置によるイオン分布の測定部位を決定する. (3)導管・篩管液の採取方法を検討する.水耕栽培で長期にわたりソバ3種の耐塩性を比較した結果,普通ソバ2品種より,ダッタンソバ2品種のほうが耐塩性が強いことが示され,土耕の結果と一致しなかった.これは,長期の水耕栽培では根から水カビ類が侵入して根を壊死させる可能性が示唆された.そこで次年度には培養液を紫外線などで殺菌して水耕実験をすることとした.ソバ3種の根の木部のナトリウムをESEMとX線微量分析装置によって解析した結果,葉身のNa含量と根の木部のNa強度との間には,負の相関がみられた.導管液の採取を,地上部を除去後の切断面からの出液採取方法と地上部を切除した植物体の根をプレッシャーチェンバーに密封して加圧をおこなう方法で比較した.前者よりも後者のほうが,導管液の採取量は多かったが,イネ科作物のように連続して多量の採取には至らなかったため,導管内のナトリウムの測定にはESEMとX線微量分析装置を供用する方法のほうが適していることが示唆された.
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