本研究は、水田雑草の生長やイネとの資源の競合に及ぼすCO_2増加の影響を明らかにし、大気CO_2濃度上昇時のイネの生産量の変動予測に資することを目的とする。本年度は、主要な水田雑草を対象として、大気CO_2濃度の増加が各種雑草の生理、生長および種子生産量に及ぼす影響を明らかにすることを目的に研究を行った。 野外型人工気象室を用い、外気(380ppmv)および高濃度(680ppmv)の2水準のCO_2濃度条件下で水田雑草を生育させた。タイヌビエ(イネ科)、コナギ(広葉)、イヌホタルイ(カヤツリグサ科)、アカウキクサ(浮遊生雑草)および対照としてイネ(品種:コシヒカリ)を供試した。 水田雑草およびイネのバイオマスはCO_2濃度増加により増加したが、その増加率は移植後30〜40日の生育初期に最も高く、以後生育に伴い増加率は低下した。生育初期のバイオマス増加率はイヌホタルイ、コナギ、タイヌビエ、イネの順に大きく、それぞれ147、58、36、22%であった。穂数はイヌホタルイ、タイヌビエでそれぞれ73、47%増加した。種子生産量(穂重)はイヌホタルイで有意に増加したが、その他の雑草では有意な増加は認められなかった。イヌホタルイでは生育後半にCO_2濃度増加に対する光合成の適応がみられ、最大電子伝達速度に対する最大炭素固定速度の比が有意に増加した。アカウキクサのバイオマスは、CO_2濃度増加およびリン施肥の相互作用がみられ、CO_2濃度増加によるバイオマス増加率はリン施肥をした揚合で32%、無施肥の場合では20%であった。 これらの結果は、水田雑草の高CO_2に対する生長応答ポテンシャルがイネよりも高く、大気CO_2濃度が増加した環境においては雑草による減収率が高まる可能性があることを示唆している。
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