2007年にCACOASからの出力を用いた薬滴付着量分布シミュレーションモデルを作成し、'ラ・フランス'を対象に合計154個の樹形を対象にそれぞれ20年間のシミュレーションを行った。パラメータとして、薬滴飛散距離による鉛直方向に方向転換する薬滴粒子量割合を、噴霧装置からの距離を異にする多数の容器内に落下した水量から算出し、また、薬滴粒子が水平方向直進部分および鉛直方向(真上と真下)直進部分に分かれると考えたときの減衰係数(KhおよびKv)については直達光減衰係数に類似させて葉の傾斜角度分布から算出した。2008年には上記のパラメータ値の検証を目的に、方向転換する薬滴粒子量割合については、水と容器の代わりに、クレフノン液と黒板(塩ビシート)を用い、落下付着した薬滴面積(画像解析法)により上記割合を計算した。また、KhおよびKvについては実際の葉層中に水平方向または鉛直方向の一次元グリッドを組み立て、各ブロックの葉数をカウント後、片方からクレフノン液を噴霧し、途中に置いた黒板上に付着した薬滴面積から減衰量を算出し、各ブロックのLAIデータと関連付けることで減衰係数を計算した。さらに、'ふじ'、'佐藤錦'および'平核無'についてシミュレーションを行った。その結果、鉛直方向に方向転換する薬滴粒子量割合の両年の曲線は良く近似した。また、薬滴付着試験で求めた減衰係数と葉の傾斜角度分布から推定した減衰係数はほぼ良好な類似性が認められた。ただし、他樹種3品種を対象に行ったシミュレーション結果はセイヨウナシ'ラ・フランス'の結果に比べてほとんど差異が認められなかった。その理由として、154個の樹形における骨格枝の組合せや剪定ルールなどが4樹種とも全く同じ設定にしたためであったためと考えられる。
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