本研究では日本の世界文化遺産における森林の現状をGISと資料を用いて明らかにした。登録資産とバッファーゾーンを合わせた「世界文化遺産地域」では全面積の77%、登録資産では74%が森林である。これらの森林は、社寺の後背林、産業や生活への利用など人とのかかわりという点で重要な意味を持っており、特徴的な植生も分布しているが、世界遺産一覧表記載推薦には森林の価値及び管理に関する具体的な記述は少ない。今後の推薦資産については、文化的な側面からだけではなく、種の多様性、植生の特徴などの評価、森林管理の検討など、統合的な保護施策の展開が望まれる。
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