研究概要 |
・笑気ガス処理により,受精直後の未熟杯の染色体を倍加する技術を開発してきたが,21年度には,この技術を,シンテッポウユリ×アジアティックハイブリッド(AH)の種間交雑後に植物体を笑気ガス処理することによって,雑種胚の染色体を倍加でき,交雑当代で複2倍体を育成することができた。これによって,コルヒチン処理によって複2倍体育成を図っていた従来法(3~5年)に比較して,大幅に育成年限が短縮できる(約1~3年)。また,コルヒチンが有効でない種へ適用できるなど,画期的な作物育種が展開できることを示した。 ・笑気ガス処理によって得たAHの2倍性花粉を2倍性シンテッポウユリへ交雑したところ,3倍性の種間雑種の作成に成功し,交配後わずか1年で発蕾に至った。このような3倍性の種間雑種を笑気ガス処理により多数育成した。これらの3倍性種間雑種は,子房親あるいは花粉親のどちらかのゲノムを2セット含むゲノム構成が非対称型の種間交雑となっている。このため,雑種はゲノムを2セット供与した両親の方へ形質が似ることとなり,2倍性種間雑種に見られる両親の中間型の中途半端な特性を回避でき,実用品種化に向けた優れた選抜材料とると考えられた。 ・シンテッポウユリ×2倍性レガタ花粉(AH)の交雑から得られた3倍性種間雑種のゲノム構成をGISH法で確かめたところ,雑種がシンテッポウユリの1ゲノムとAH由来の2ゲノムを持つことが確かめられた。笑気ガス処理花粉を用いて育成した雑種のゲノム構成をGISH法により同定する技術を開発したので,現在育成済みの雑種のゲノム構成や雑種後代での染色体の組み換えや染色体構成の分析が可能となった。
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