栽培地の異なる7本の甲州ブドウを山梨大学圃場に植栽し、同一条件で20年間栽培した。甲州ブドウのゲノム上に存在する8種のレトロトランスポゾンの塩基配列を参考に、レトロトランスポゾン外向きプライマーを作製し、すべてのプライマーの組み合わせ(136通り)でPCRを行った結果、供試した7本の甲州ブドウの間に、レトロトランスポゾン挿入位置によるDNA多型を確認した(平成19年度)。この結果は、同一とされてきた甲州ブドウという品種内に遺伝子レベルで異なるクローンが存在することを意味する。平成20年度は、この結果を応用し、甲州ブドウのクローンを分類することが可能な「遺伝子マーカー」の開発を試みた。 1. ゲノム上におけるレトロトランスポゾン挿入位置の同定 クローン分類に係わるレトロトランスポゾンのゲノム上における挿入位置および近傍DNA塩基配列を決定した。 2. クローンを識別するための遺伝子マーカーの開発 項目1の塩基配列情報からクローンを識別するための「遺伝子マーカー」の開発を行った。その結果、特定のクローンを識別可能な「遺伝子マーカー候補」をいくつか得た。 以上の結果から、甲州ブドウには遺伝子レベルで異なるクローンが存在し、それを識別する遺伝子マーカーの開発も可能であることが示唆された。今後、「遺伝子マーカー」を確立し、山梨県内における本マーカーの分布調査を行い、現在どの程度のクローンが分布しているか明らかにする予定である。加えて、本課題で開発中の遺伝子マーカーをブドウ樹選抜法の1つとして確立することを目指す。
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